
期待に胸を膨らませて入社したのに、以前にも紹介したようなケースで、入社月の途中で退職する人も中にはいますよね。
今回は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の観点から解説をしてみようと思います。
出来ることなら退職日は月末にした方が後々面倒な手続きをしなくてすみますよ。
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同月得喪とは
会社に入社した月の途中に退職をする場合、保険証(健康保険)について給与天引きされる分に、かなり厄介な問題が発生します。
どういうことかと言いますと、入社して社会保険の被保険者資格を取得したのに、同じ月にその被保険者資格を喪失したということになります。
これを同月得喪(どうげつとくそう)と言います。
この同月得喪の場合の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の扱いが非常に面倒なんです。
月の途中での退職なので、社会保険料は控除されないと思ってしまうかもしれませんが、実は同月得喪の場合は社会保険料が必ず1か月分発生することになります。
例えば、あなたがある会社に6月1日に入社したけれど、6月29日に退職されたとします。
そうしますと、資格喪失日となる6月30日以降は、原則的に何らかの健康保険制度、年金制度の被保険者になる必要があります。
以前は、6月中に別の会社に就職した場合には、6月の社会保険料を二重に支払うことになってしまっていたようです。
健康保険料については保険証を使用する可能性があるのでやむを得ない面もありますが、厚生年金保険料については、月の末日に加入していた年金制度についてだけ、将来の年金額が計算されることになるので、適正な負担とはいえないという批判がありました。
そこで、2015年10月1日からは、同月得喪の後で国民年金の被保険者になったり、厚生年金保険の被保険者になったりした場合には、厚生年金保険料についてのみ、徴収された保険料が還付されるという扱いに法改正がなされました。
あくまで厚生年金保険料についての話で、健康保険料については還付されないことにご注意ください。
ここで注意しなければならい点は、細かい話ですが、同月得喪の後で国民年金や厚生年金の被保険者にならない場合には、厚生年金保険料は返還されませんので注意してください。
厚生年金保険料還付の流れ
同月得喪の場合、同じ月に社会保険加入と喪失をし、さらに同じ月で転職先の社会保険に加入した場合又は国民年金の手続をした場合に限り還付されます。
例)厚生年金保険料が還付されるケース
(1)同月内に他社で社会保険加入
6月 1日社会保険加入
6月30日社会保険喪失
6月30日他社で社会保険加入
(2)同月内に国民年金加入
6月 1日社会保険加入
6月30日社会保険喪失
6月30日国民年金加入&納付
上記(1)(2)のいずれかに該当する場合は、管轄の年金事務所から会社宛てに通知が届き、通知書に同封されている「還付請求書」を提出することによって還付してもらえます。
ここで注意しておきたいことは、自動的に還付してもらえるわけではないということです。
厚生年金保険法第19条
1 被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保験者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までをこれに算入する。
2 被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を1箇月として被保険者期間に算入する。 ただし、その月に更に被保険者又は国民年金の被保険者(国民年金法第7条第1項第2号に規定する第2号被保険者を除く。)の資格を取得したときは、この限りでない。
3 被保険者の資格を喪失した後、更にその資格を取得した者については、前後の被保険者期間を合算する。
4 前3項の規定は、被保険者の種別ごとに適用する。
5 同一の月において被保険者の種別に変更があつたときは、前項の規定により適用するものとされた第2項の規定にかかわらず、その月は変更後の被保険者の種別の被保険者であつた月(2回以上にわたり被保険者の種別に変更があつたときは、最後の被保険者の種別の被保険者であつた月)とみなす。
退職者に還付されるのは、年金事務所から企業に還付されたあと
企業が還付請求後に年金事務所から厚生年金保険料の還付を確認したら、退職者本人(つまり、あなた)にも必ず厚生年金保険料を還付するよう伝えましょう。還付金だけ別に企業の口座に年金事務所から振込まれるわけではありません。毎月年金事務所から会社に送付される「保険料納入告知額通知書」で保険料額を確認することになります。
厚生年金保険料の納付義務者は会社であるため、年金事務所から直接被保険者本人に還付することができません。
これが、退職者にとってじれったいのですが、企業の人事労務担当者にとっても、この還付手続きは頭を悩ませる問題なのです。
日本年金機構は厚生年金保険料還付の必要のある方に関して、企業に連絡の上で保険料を返してはくれます。しかし、その連絡が来るまでにはかなりのタイムラグ(3~6か月)が生じます。
お金に関することですから、おろそかにできないのは当然なのですが、そこには大きな問題が2つあります。
1つは、すでに退職してしまった人とのやり取りが発生するという点と、もう1つは源泉徴収票の作り直しが必要になるという点です。
源泉徴収票に関しては、手間はかかるものの、するべきことは決まっています。それに対して、退職された方との連絡というのは型どおりにスムーズにいかない場合も往々にしてあり得ます。
還付までの流れ(図示)

まとめ
同月得喪というのは、手続きに半年ほどかかり、手続きが非常に複雑となっております。退職時に嫌がらせを受けた人の場合、すんなりと還付してもらえるかわからないというのが現実です。
正直言って、そのような嫌がらせをする企業の人事労務担当者は、今回紹介した同月得喪という制度について知らない人の方が多いと思います。
辞めていったやつのために、そこまで面倒な手続きが出来るか!と放置される可能性の方が大きいでしょう。でも、保険料は企業と社員の折半ですので、還付申請をしないと会社負担分も返戻されません。ブラックな会社の場合、還付自体を黙殺してしまうかもしれませんね。
とにかく、このようなケースで退職し、同月中に国民年金か別の企業に就職された人は半年後に還付について確認するしかないでしょうね。
実は、私も退職した会社へ催促するタイミングを見計らっているんですよね。











